心と身体のよりどころ

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心に花園を ~呼吸 vol.6~

~心に花園を~

主人が他界する直前に、最期に打ち出した概念だった。

ある穏やかに晴れた冬の日。
春を思わせるような陽気に気分がよくなった主人は、プレゼントしてもらった沢山の花を愛でたくなり、初めてテラスに立った。

風邪をひいてしまったら命とりになる病状の為、冷気を避けて、身体を冷やさないように気を付けていた主人は、窓越しに花を愛でることはあっても、自ら外に出ることを避けていた。 怖かったのだろう。
 
その日は風もなく、暖かな日差し照らされていたテラスは、春を思わせるような心地よさだった。
十分に温められた昼過ぎに、窓を開けると甘い花の香りが漂っていた。

「ちょっと外へ出てみようかな。」

贈っていただいた花。 私が買ってきた花。 色とりどりの花の一輪ずつに視線を落としていく。
端からゆっくりと花と対話をしていく。

「きれいだね。 ほんとにきれいだね。 ありがたいな。 こんなにたくさん贈ってくれて、ありがたい。 ここに来てくれた人の心が和むよ。 こういう風にしたかったんだ。 U先生が代わりにやってくれたんだね。」
「この花、可愛いな。 こっちの花も健気だね。 この花は珍しいね。」

一通り見渡したとき、
「こうゆう時間、いいもんだね。 夫婦でゆっくりと花を愛でる。 こんなふうに他愛もないことを話しながらのんびりとした時間を二人で過ごすのもいいもんだね。 皆もこんな時間を持たなきゃだめなんだよ。」

元気だったころに、一緒に散歩のついでに梅や桜の花見をしたこともあったけれど、花見をしながらも頭の中で日常のごたごたしたことを考えていたのだろう。
モルヒネを使用し始めて痛みがおさえられると、心が穏やかになっていた。 もう仕事のことも日常の煩わしさも頭から離れていた。 そうなって初めて心の底から二人の時間を楽しむことができたのだろう。

「そろそろ入ろうかな」

部屋に戻り、しばらくすると
「なんだ、わかっちゃったよ。 細胞呼吸はどうしたらいいのか。 簡単なことだった。」

彼のストレス理論の中にもでてくることなのだが、動物も植物にも邪念がない。 彼らは真っ直ぐに成長していく。 大きくなるために太陽に向かって迷うことなく成長を続ける。 その真っ直ぐなエネルギーには嘘偽りがない。 私たち人間も、バランスの調整を図るために自然のエネルギーに触れることは大切なことなのだ。
我が家の小さなテラスにも、色とりどりの小さな自然があった。 花たちは太陽の光をいっぱい浴びて、土から栄養を吸収して、蕾を膨らませて大輪を開いていく。 その太陽に向かっている真っ直ぐなエネルギーに融合すれば、その中で行われる呼吸は細胞呼吸になっているということだった。 

「いつも心の中に花園を描いていれば、呼吸は細胞呼吸になる。」
「心中に花園を持っていなければならない。忘れてはいけない。」
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強靱な肉体を誇示していた彼が、全てをはぎ取られて最期に行き着いた境地だった。
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by idun-2006 | 2013-02-22 13:37 | 闘病生活

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