心に花園を ~一服のおもてなし~
全てが終わった。 彼との激闘のなにかもが終わってしまったのだ。
連絡すべきところへ連絡し、喪失感に浸る間もなく今度は彼を送らなければならない。
ずっと主人の命を見てきた私には、葬儀はあくまでも形式的なものであって、皆さんと彼とのお別れの時間でしかなかった。
私と主人との間で行うお別れは、もっと静かで神妙な中でかよわせるから。
何がどう広まったのか分からないが、大勢の方が故人との別れを偲んで集まってくださった。
お馴染みのお顔から懐かしいお顔、私はお見かけしたことのないお顔もあった。
人の出入りで慌ただしくなると、主人の看病から手伝ってくださった方が、手際よく裏方の手筈を整えてくださる。
私の手を煩わせないように、必要と思われる物の場所さえ確認したら、後は「勝手にやらせてもらてるから」と、全てを仕切ってくださっていた。
お客様の靴や傘があふれかえっているのを見ると、邪魔にならないように整頓してくださる。
来客があれば、黙っていてもお茶が出てくる。
言葉では表せられないほど感謝の気持ちでいっぱいだった。
この彼女が煎れてくださるお茶が絶品だった。
彼女が煎れてくださったお茶をお客様がいただくと、「あ~、美味しい!」と皆が目を細める。
私もいただいてみると、一服のお茶が疲れも何もかも吹き飛ばしてくれるほどの深い味わいのお煎茶となっていた。
あれほど美味しいお茶は、いただいたことがない。
こんなに美味しいお茶を私もお出しできるようになりたいと思い、彼女にお茶の煎れ方を聞いてみた。
「ええ? 特別なことなんて何にもしてないわよ。 茶葉が高級だったんじゃない? おいてあったお茶を普通にいれただけよ。」
ちなみに同じ茶葉で私が煎れてみると、やはり彼女のような味わいは出せなかった。
母が煎れても微妙に違う。 誰もが絶賛するあの美味しさは、今でも忘れることができない。
とっても不思議な時間だった。
ずっと独りで彼を見守っていたのに、こんなにも大勢の方が彼を見送ってくださる。
そして、私独りではどうにもならなかったところは、手伝ってくださる方が現れてくださる。
全てが終わって、皆がそれぞれの生活に戻っていく。
一通りのことを片づけて、少しの間、休みたかった。
やっと自分の身体を休ませることができる。
でも、その瞬間が喪失感と真っ向から向き合うことになる。 怖かった。
皆を送り出し、居間の椅子に腰かけた途端に、涙が絶叫が、私の中からあふれ出した。
「私って、こんな泣き方ができるんだ」
誰にも気兼ねすることなく、自分の中に残っている感情を全て吐き出してしまおうと、気のすむまで泣くことにした。
思いっきり泣いたら、ちゃんと歩き出さなきゃ。 独りになっても、歩き続ける。
連絡すべきところへ連絡し、喪失感に浸る間もなく今度は彼を送らなければならない。
ずっと主人の命を見てきた私には、葬儀はあくまでも形式的なものであって、皆さんと彼とのお別れの時間でしかなかった。
私と主人との間で行うお別れは、もっと静かで神妙な中でかよわせるから。
何がどう広まったのか分からないが、大勢の方が故人との別れを偲んで集まってくださった。
お馴染みのお顔から懐かしいお顔、私はお見かけしたことのないお顔もあった。
人の出入りで慌ただしくなると、主人の看病から手伝ってくださった方が、手際よく裏方の手筈を整えてくださる。
私の手を煩わせないように、必要と思われる物の場所さえ確認したら、後は「勝手にやらせてもらてるから」と、全てを仕切ってくださっていた。
お客様の靴や傘があふれかえっているのを見ると、邪魔にならないように整頓してくださる。
来客があれば、黙っていてもお茶が出てくる。
言葉では表せられないほど感謝の気持ちでいっぱいだった。
この彼女が煎れてくださるお茶が絶品だった。
彼女が煎れてくださったお茶をお客様がいただくと、「あ~、美味しい!」と皆が目を細める。
私もいただいてみると、一服のお茶が疲れも何もかも吹き飛ばしてくれるほどの深い味わいのお煎茶となっていた。
あれほど美味しいお茶は、いただいたことがない。
こんなに美味しいお茶を私もお出しできるようになりたいと思い、彼女にお茶の煎れ方を聞いてみた。
「ええ? 特別なことなんて何にもしてないわよ。 茶葉が高級だったんじゃない? おいてあったお茶を普通にいれただけよ。」
ちなみに同じ茶葉で私が煎れてみると、やはり彼女のような味わいは出せなかった。
母が煎れても微妙に違う。 誰もが絶賛するあの美味しさは、今でも忘れることができない。
とっても不思議な時間だった。
ずっと独りで彼を見守っていたのに、こんなにも大勢の方が彼を見送ってくださる。
そして、私独りではどうにもならなかったところは、手伝ってくださる方が現れてくださる。
全てが終わって、皆がそれぞれの生活に戻っていく。
一通りのことを片づけて、少しの間、休みたかった。
やっと自分の身体を休ませることができる。
でも、その瞬間が喪失感と真っ向から向き合うことになる。 怖かった。
皆を送り出し、居間の椅子に腰かけた途端に、涙が絶叫が、私の中からあふれ出した。
「私って、こんな泣き方ができるんだ」
誰にも気兼ねすることなく、自分の中に残っている感情を全て吐き出してしまおうと、気のすむまで泣くことにした。
思いっきり泣いたら、ちゃんと歩き出さなきゃ。 独りになっても、歩き続ける。
by idun-2006
| 2013-02-02 09:48
| 闘病生活