心と身体のよりどころ

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心に花園を ~呼吸 vol.4~

病気になって、家にいることが多くなった主人は、自分の身体の調整の為に何かをしている様子がうかがえなかった。

食事が摂取できなくなった身体では、絶対に欠かさなかったウエイトトレーニングもできない。
散歩をしている様子がない。 呼吸法もやっているようには見えない。 家の中で身体を動かしている痕跡がない。
ある日、勇気をもって彼に問いただしてみた。

「ねえ、自分が考える運動法で癌を克服するっていったよね。 私が出かけている間に何かしてるの?」

返事がない。
「約束したよね。 自分の考える方法で治すんでしょ。 あなた自身がやってくれないとさ。」

病気を発してショックなのは主人自身であることは、十分承知している。 だからきついことは言いたくない。 彼自身も焦っているだろう。 気持ちが塞いでしまっておかしくない。 でも、だからといって何もしなければ、いい結果が得られない。 頑張ってほしい。 そのためにできることは、なんでも手伝いたい。

本の執筆という大きな壁が立ちはだかった彼は、なかなか進まない原稿を前にもがき苦しんでもいた。
自分の病気と本の原稿という大きな課題を前にして、潰されそうになっていたのかもしれない。

彼を失ってしまうかもしれない恐怖に耐えられなくなった私は、ある時再び彼に問いただした。

「ねえ、呼吸法、やってないでしょ。 なんでやらないの? 私にはあれだけやらなきゃダメって言ってたじゃない。 そんなんじゃ、病気を治すなんてことできないでしょ。」

「あのね、ここの住まいじゃ、気が通らないの。 窓を開けると直ぐとなりの塀でしょ。 気が流れずに詰まってしまうの。 あのね簡単に言うけれど、本来はもっと自然に接した中で自然のエネルギーと触れあい、とっても繊細なレベルで行うことなんだから。」

それは分かっている。 難しいのも十分承知しているつもりだった。 その不可能なことを可能にしてきたのが主人そのものではないか。 あなただからこそ、その難題に挑戦して克服するのではないのか。 それができるのは貴方しかいない。 しなければ癌は治らない。 死んでしまうかもしれない。 だから、やってほしかった。 

「じゃあさ、公園へいってやればいいじゃない。 私の不眠だってそれで治したようなものでしょ。 小さな自然だって、ここよりましじゃない。」

「あのね、君には分からないと思うけれど、こうみえて結構きついんだよ。 公園までも歩いていけないのさ。 行けたにしても、帰ってくる体力があるか自信がないの。 動けなくなったらどうするの? 貴方じゃ僕を担げないでしょ。」

じゃ、自転車で行けばいい。 実際、そこまで脚が弱っているとも思えなかった。 駅まで歩くことだってあったし、気持ちの問題なのだ。
でも、その難しさは十分承知してもいる。 それ以上強いことは言えなかった。

実際、腹式呼吸を行おうとして、腹圧をかけることで肝臓が圧迫されて破裂するのではないかという恐怖心もあったのかもしれない。
すくなくとも腹圧がかかることで、より腹部の塊を実感していたに違いない。
私は私で彼の傍にいながら、彼を失ってしまうのではないかという恐怖心とずっと向き合っていた。
その恐怖が頭をよぎると、考えたら現実になってしまうのではないかという怖さも加わり、全てを切り離すしかなくなる。
一端現実から目をそらし、彼が元気になって再び一緒に仕事をしている映像に切り替える。 そんな理想的な未来像を頭の中に描くように努力する。 けれども、奥底では否定しきれない恐怖をずっと抱いていた。

彼の不安と私の不安。 共に表にでないように頭の中を切り替えながらも、どこか息が詰まったような日々をおくっていた。

細胞呼吸の答えは、実に思いがけないところで得ることになる。
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by idun-2006 | 2013-02-20 12:03 | 闘病生活

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