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心と身体のよりどころ

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心に花園を ~無欲・希望~

私たちの中に欲というものは、彼の病状が深刻になるにしたがって存在しなくなった。

三大欲と言われる食欲・睡眠欲・性欲はとっくに求めてない。 
彼に食欲はあったけれど、食べられない。 固形物を食べてしまうと、激痛と発熱で3日くらいは苦しんでしまう。 私に食欲はほとんどなかった。 食べないと動けなくなるから何かを食べる。 私が食べないと主人が心配するから食べる。 私にとっての食事はそんなものだった。 ”美味しいものを食べる”という欲求がどんなものだったのか、忘れてしまうほどだった。 
睡眠は、なんとなく眠れる時に寝る。 以前のように規則正しく、夜就寝して日中は活動するというリズムは刻めなくなっていった。
金銭欲、名誉欲、物欲、・・・、あらゆる欲をはぎ取られ、この先も取り戻すことは望めない。 
「欲」に望みはなかった。 唯一願うことは、主人が生き続けてくれること。 主人が寝たままの状態でもいいから、このまま時間を共有し続けたかった。

もう病を克服することは望めない。 でも希望は捨てたくない。 最期の時を迎えるまで、もしかしたら奇跡が起こるかもしれない。 その可能性はほとんどないけれど、絶対ということはないはずだ。
こんな状況で、彼にどんな希望を与えられるのだろう。
”現実の生活の中で彼に希望を与えること” と考えると言葉が浮かばない。
主人がもし死んでしまったら、その時点で彼の全てが消滅するとは思えなかった。
なにもかもが消えてなくなってしまうなんて考えられない。
あの世とか別世界があるかどうかは分からない。
この事態の中では、あの世があると思いたいし、どこかで信じている自分もいた。
この世では望むことがないならば、向こうの世界に行ってしまっても役立つこと。 それはなんだろうと考えたときに思い浮かんだのが 「命」 だった。 この世でも向こうの世界でも共通していると思われることは、彼の命だった。 
では、あちらの世界に行っても彼の命が輝き続けるために、今どこに意識を向けさせればいいのか。
そう考えたときに、私の中から言葉が溢れ出てきた。

彼の命がずっと輝き続けるように、今私ができることを精一杯やり遂げること。
by idun-2006 | 2013-01-18 09:00 | 闘病生活

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