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心と身体のよりどころ

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心に花園を ~想い出~

この時期になるとなんとなく思い出す、主人とのこと。
彼のことをじっくりと看病できたのは、この時期でした。
澄み切った寒空のこの時期になると、彼の衰退していく肉体を前に切ない思いに包まれ、けれども懸命に生きようとする命と向き合い、人間の本質を垣間見ることのできた、貴重でとっても不思議なひと時でした。

病気を察知した彼は、長いこと私に自分の身体の不調を隠そうとしてました。
発病した事は気付いたその日に教えてくれましたが、私の反対を押し切って、病院へは行かずに自分の病と向き合うことに決めてしまったため、長いこと私を不安にさせないように詳しく病状を言わなくなってました。
彼の決意は岩のように硬く、何を言っても聞き耳はまったくなく、私の提案はことごとく打ち砕かれてました。
ただ、彼は死に向うのではなく、一貫して自分の概念で生還することを考えてました。
癌についてあらゆる概念を学び、取り入れられると思うものは何でも自分自身で試してました。

”今ならまだ癌は小さい。 今病院へ行けば、ほんの少しの治療で治るかもしれない。”

そんな私の焦りもむなしく、彼の心を動かすことはできませんでした。
彼が居なくなる生活など想像がつかない、というより考えたくなかった。
彼に何を話ても、”癌は怖くない。 治せる病気。 末期でも生還した事例をいくつも見てきた。” などと、私を安心させようという思からなのか、楽観視することばかりを口にしてました。
それでも、私の不安はぬぐえずに、彼の裏側の思いを探ってみたり、高額医療費を案じているのなら、その不安を取り除ける方法はないのかと、彼に内緒で役所へ相談しにいったこともありました。
時に「責任」を盾に高圧的に彼に迫ってみましたが、無視。
それではと弱い私をさらけ出して懇願してみるけれど、楽観的な理屈を並べられて、逆に悟らされてしまいます。
彼自身が抱えていた痛み、苦しみは、私に気づかれないように、ずっと隠してなんでもない自分を演じていました。
私には全部見抜けてしまってたけど、私も気づかない振りをしていることが、彼に余計な心配をさせずに病気を治すことに集中してもらえると考えるようになっていったのです。

そこからいろんな壁を乗り越えて、やっと病院へ行ったのは12月。
そこで、余命2か月の命の宣告を受けます。
20日ばかりの入院を経て、彼は自宅療養することに決めました。
なんでも自分で決めてしまう人でした。 私の協力なしでは成り立たないことでも、私の承諾を得るなんてことはせず、自分の決意に従うものと決め込んでいました。

医師が宣告した命の期限が近付くと、彼は私に 「しばらく仕事を休んで家にいてほしい」 と初めてお願いらしきことを言ってきました。
癌が消滅したわけでもない彼の身体は、いつ何が起きるか分からない状態。
突然発作が起きたとき、一人ではどうにもならずにそのまま死んでしまうことを懸念して、生還に向かうまで大事を取りたいということでした。
結局、それから約一か月半後に彼を看取ることになってしまうのです。

彼は傍にいるけれど、もうすぐいなくなってしまうかもしれない不安。
傍にいるけれど、何もできない虚しさ。
残り少ない時間になるかもしれない彼と過ごす時を大切にしたかった。

空気の冷たいこの時期になると、あの時のことが蘇ってくるのですが、それは悲観するもの、悲しくて辛い想い出とは少し違います。

私たちは、彼の病を通して、人間の命、人間の偉大な能力を垣間見ることができました。
最悪と思われる状況から、いろんなことを教えてもらえました。
それを、言葉にしたいと何度も書き出してみるのですが、どうしても私の真意とは別に、昼メロドラマっぽくなってしまい、中断してしまいます。

こないだ、久しぶりに彼が最期にのこしたブログの記事を読みました。
そこに綴られた内容は、一般的な末期がん患者の心境とは違います。
やはり、これを伝えなければと改めて決心しているところです。

時系列に沿って、起きたことをそのまま書こうとするから、メロドラマっぽくなってしまうのかも。
少し工夫して、今度こそ綴っていきたいと思ってます。
若いエネルギーに満ちているときは、想像もつかないことかもしれない。
それなりの歳になっても、健康であれば考えないことだけれど、普段からどういう思想で過ごしているかで、発病にいたるかどうかが変わってきます。
また、単なる風邪であったとしても、病状が違ってきます。
少なくとも、私は自分の人生観がまったく変わりました。
読んでくださる方にとっても、これから歩まれる人生のヒントになればと願ってます。

うん、ちゃんと記さなきゃ。
by idun-2006 | 2012-02-08 12:53 | 闘病生活

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